1.『ニューヨーク・ドライエイジングビーフ事情視察』2009年3月9日(月)〜3月15日(日) | 日本ドライエイジングビーフ普及協会事務局長 石神修 |
「いやはやこれほどまでに」 それが今年の3月、5泊7日のニューヨークへの訪問の実感でした。 最高品質のビーフがまぎれもなく“Dry Aged”カテッセン、そのいずこでも。そして「今、評判のレストランは」の応えとして“Dry Aged Beef”を謳い扱う店が挙げられ、訪れたその日が平日であるにもかかわらずいずれも満席の店々でした。 視察の取り仕切りは静岡県富士宮『さの萬』佐野社長。ニューヨークへのドライエイジング視察のベテラン。附随するメンバーは東京ドームホテル鎌田総料理長、コンラッド東京日本料理統括料理長以下、私を含め7名の計8名。 |
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先ずは上質スーパー、デリカテッセンの店々を次から次へと視察。上質スーパーでは、日本で最大の関心を高める「ホールフーズマーケットWHOLE FOODS MARKET」、今でも注目を集めつづける「ステューレオナルドStew Leonard’s」、個性的な活力を漲らせる「フェアウェイFAIRWAY」。そして、デリカテッセンでは、小粋でセンスに溢れる「シタレラCitarella」、おしゃれなセンスに満ち満ちて楽しめる「グレイシーズマーケットプレイスGRACE’S MARKETPLACE」、名門の名を欲しいままにする「バルドゥーチBALDUCCI’S」。 どの店々の肉売場でも圧巻のプレゼンテーションは“Dry Aged Beef”。いずれもドライエイジングビーフのための熟成保管庫を売場に特設してアピールしている。「シタレラ」では正面入口横をウィンドーディスプレイにまでしている有様。堂々たる“Dry Aged Beef”の販売体制を互いに競い合っているのには驚かされるばかり。 |
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そして今回訪れたレストラン。先ずはマンハッタン1885年創業の伝統的ステーキハウス「キーンズステーキハウスKEENS STEAK HOUSE」。ここではマトンのエイジングも。古き良きアメリカが充満して満席。訪れて初日、一気にここはUSA、まさにに浸ることに。 そして伝統から一変、リファインされてモダンな“Dry Aged Beef”の今の人気ぶりを示す「クラフトステーキcraftsteak」に。広々とした店内、シンプルで美しく装飾されたインテリア。出される料理のポーションも伝統的な店とは異なって我々日本人にも抵抗が無い。漬けタレ4種も卓に配される。コーンフェッドのビーフは28日の熟成と42日の熟成が選べる。この店で印象的だったのはグラスフェッド(オレゴン州パインヒルズ)のビーフがメニュー表でいちばん高い値段になっている(もちろんWagyu Beefは除いて)こと。リブアイ14オンスでUS55ドル。ワインセラーとバーを背中合わせにしてカジュアルゾーンとフォーマルゾーン、どちらも満席。 |
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そして圧巻は「ブライアント&クーパーステーキハウスBRYANT & COOPER STEAK HOUSE」。この店は佐野氏いちばんのリコメンド。「なるほど!」と一同。店はレストランの客席ばかりにあらず。売店もあるが、なんと熟成庫もしっかりとある。それも店に入った売店の横。売店と同様にすぐに覗き入ることもできるようになっている。ここでのお店の方々の歓待ぶりは佐野氏の通いつめもあり筆舌し難いもの。まるで家族のように迎えてくれる。同行チームの両シェフもキッチンに入りシェフとも交歓。「これぞ、ドライエイジングビーフなり」と感嘆。この店ももちろんのこと店の前ではバレットパーキングの若者がてんてこまいにして満席。 「さて、このビーフは何処から」。 視察の矛先は「ブライアント&クーパーステーキハウス」に納品される“Dry Aged Beef”の加工場に向けられる。 「マスターパーベイヤーズインクMASTER PURVEYORS INC.」ドライエイジングビーフ加工センターを訪れる。この会社から特別に選別された“Dry Aged Beef”が「ブライアント&クーパー」に届けられている。このセンター加工場、いったい何本の枝肉がドライエイジングされていることか。想像もつかない程につり下げられた枝肉がファンの回る音の中で熟成されている。今回訪問はしなかったが、かの「ピータールーガーステーキハウスPeter Luger Steak House」(私はかなり前、空前の店として話題になっていた頃はからずも訪れている)も古くからの納品先の一つだと言う。 大きな熟成庫には独特の甘い香りが漂う。第2次世界大戦後から肉一筋に携わる父親のサム、それを今に引き継ぐ息子のマーク。この二人の親子でセンターはみごとなまでに取り仕切られている。ドライエイジングビーフ紹介のビデオを観せてもらい、二人からの説明を受ける。いつしか彼らを日本にも招き、ドライエイジングの技術について話してもらう機会が持てたらと願う。 小売店、レストラン、そして熟成加工場を巡る視察から、いつまでも霜降牛のみならず日本で生産される牛が、本来の赤身のおいしさで評価が得られることのできるよう、そんなドライエイジング技術の修得がなされる、広く食されることを強く念じながら旅の帰途に就く。 |
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有限会社 石神事務所代表 |
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