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ドライエイジングビーフに期待を込めて 齋藤立夫(株式会社柴田書店)

鴨、仔羊、豚、鶏、馬‥‥。レストランや料理屋さんのメニューを見ると、昨今、本当にたくさんの「肉」の種類が掲げられています。また、最近の傾向として、その「肉」がどんな動物のものであるかだけでなく、産地やブランド名が記されていることも少なくありません。そうして見ると、「肉」の選択肢の数は、限りないのではないかと思えるほど。ジビエといわれるものも含めたら、なおさらです。
が、飲食店の方々に伺ってみると、おもしろいことに、「肉」の中でもお客さんからの一番人気は、「やっぱり牛なんだ」としばしば耳にします。これだけ選択肢があふれていても、です。食習慣といってしまえばそれまでかもしれませんが、「牛肉」というものの味や香り、そしてイメージが、日本人には何ものにも代えがたい、「肉」を代表するものの一つであるということなのでしょう。

ただ一方で、「牛肉は料理がしづらい」と、料理人の方々から伺うことがあります。これは、日本で人気のある牛肉とは、「赤身の肉」よりも、筋肉に脂肪が霜降り状に入った「サシ入りの肉」を指すことが多く、そうした脂肪を多く含む肉はソースと合わせづらいから、とのことのようです。つまり、ソースとは塩分や香り、そして油脂を添えて主役の素材−−−−たとえば牛肉−−−−をよりおいしくするためのものであり、もともと脂肪を含んでいるサシ入りの肉には、重たくなりすぎるからソースは合わせられない。だからサシ入りの肉は、「焼きっぱなし+塩+コショウ」で充分で、逆にいえば、それ以外にはできることがない、と。

そんな中で、牛肉料理の幅を広げてくれる可能性を持つものの一つが、ドライエイジングビーフではないでしょうか。肉の持つ余分な水分を飛ばしながら熟成させることで、肉にさらなる旨みや香りをもたらせるのがドライエイジングだと、私は理解していますが、この方法を用いれば、「赤身の肉」にも「サシ入りの肉」にも、それぞれにさらなる独特の味わいが生まれるはずであり、その味わいがまた、新しい料理の誕生につながるかもしれないからです。

ただ、日本ドライエイジングビーフ普及協会のメンバーに名前を連ねさせていただいている私も、ドライエイジングのすべてを理解しているとはいえません。たとえばアメリカでは、それはとても伝統と価値のある技術として根づいているようですが、われわれ日本人にとってはまだ未知のものであるといってもいいでしょう。でも、今が日本のドライエイジングの出発点であればこそ、一人でも多くの方とともにドライエイジングについて理解を深め、ドライエイジングビーフの普及に努めることが、日本の料理界に、そして日本の食文化にとって意味のあることだと考えていますし、何よりも、この日本にまた一つおいしいものが増えるということが、個人的にはうれしい限りです。

(株)柴田書店勤務 
日本、中国、フランス、イタリア料理をはじめ、さまざまな料理をテーマとしたプロの料理人向けの月刊誌『専門料理』(毎月19日発売)編集部員。
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