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ドライエイジングビーフへの思いと熟成取組みの報告 日本ドライエイジングビーフ普及協会副会長
佐野佳治

今から30数年前、ニューヨークの食肉店『ローベル』を訪れた際、富裕層が食しているというドライエイジングビーフを見かけました。その時は金持ちの特別なものとしてしかとらえておりませんでした。近年、ニューヨークを訪れる度にドライエイジングビーフがスーパー、デリカテッセン、ステーキハウスの中心的存在になって、お店の売りになっていることに気づきました。

また、私の高校時代の友人がニューヨークでレストランを展開しているのですが、5年前に、その友人にニューヨークタイムスでステーキハウス全米No.1と言われるロングアイランドに在るブライアント&クーパーへ連れられドライエイジングビーフを食した時の感動は、食肉を扱っているものでありながら、赤身のステーキのその肉汁の旨さは驚くばかりのものでした。

最近の消費者の傾向として、
・霜降りではなく赤身肉でジューシーなもの
・健康志向
・熟成肉に関心が高まっている
以上のようなことが考えられます。

そこで、私は友人にブライアント&クーパーのブッチャーであるアンソニーを紹介していただき、数々の食肉店のエージングルームを見学させていただき、ドライエイジングビーフがどのようにしてつくることができるのか尋ねたところ、「温度」「湿度」「風」と教えていただくことができました。

日本に帰り、さっそく自社内にドライエイジングルームをつくり肉を熟成しましたが、ただ水分が抜け、スカスカの肉になってしまい、このようなことが1年位つづきましたが、ニューヨークで熟成庫を見た時に香りがあることを気づき、「微生物」の働きによるものではないかと思い、ニューヨークのドライエイジングビーフを分析したところ「酵母」「麹菌」「カビ」「細菌」などが働いていることがわかり、これらの菌を培養して肉に付着させたところ、ニューヨークでつくられているドライエイジングになってまいりました。

この時期にドライエイジングビーフの試食研究会を開催させていただきましたのは、最近、ドライエイジングビーフとして販売されているお店が増えておりますが、私どもが各店で食させていただいたところ、ドライエイジングビーフの名前だけが先行して本来のドライエイジングビーフとは違うものを感じており、本来のドライエイジングビーフの認識をしていただくための、このような機会をつくらせていただきました。

さらに試験を積み重ねていき、熟成がどのような効果で進むのかを、体系数値化するため、帯広畜産大学の嶋田教授にご協力いただいて、これから共同研究を進めてまいります。

ドライエイジングビーフが日本の新たな食文化の創造と新たな食肉の領域をつくれることを確信しております。
最後に、企画をしていただきました会長はじめ、委員の皆さまに感謝申しあげるとともに、参加者の方々に有意義な機会でありますようご期待申しあげます。

株式会社さの萬代表取締役社長 
大正3年創業『さの萬』三代目店主。恵まれた郷土朝霧高原に育まれる地の牛、豚、鶏肉を扱い、第11回優良経営食料品小売店等全国コンクール農林水産大臣賞受賞。従来の評価枠に捉われない地の豚「萬幻豚」の開発は多くのマスコミにも掲載され、本年3月、関東農政局、関東経済産業局の主宰する農商工連携事業の認定を受け更に美味しい豚肉の開発にも取組んでいる。
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